紹介(13) 『捜神記』 干宝 

254 天から銭を借りた夢 周擥嘖は、貧乏ではあったが道義を愛する人であった。 あるとき夫婦して夜まで畑仕事を続け、疲れきって横になった。すると夢の中で天帝が立ち寄り、嘖を憐れみ、恵みを与えてやるようにと部下に命じた。すると司命が閻魔帳をしらべ…

紹介(12) 『黄金伝説』 ヤコブス・デ・ウォラギネ 

ある外典史書によれば、イェルサレムにルベンともシモンともよばれる男がいた。……そこで子供を葦であんだ小籠に入れて、海に流した。波はその小籠をイスカリオテという島に打ち寄せた。ユダは、のちこの島にちなんで〈イスカリオテのユダ〉とよばれるように…

紹介(11) 『黄金伝説』 ヤコブス・デ・ウォラギネ 

……「キリストは、天から地にご降臨になったので、頭を上にした十字架におあがりになった。しかし、わたしは、地上から天へ行くにあたいするとされたわけだから、わたしの頭は地にむき、足は天にむくようにしてもらいたい。つまり、わたしは主とおなじ恰好で…

紹介(10) 『燃えつきた地図』 安部公房 

だが誰であれ、それら四つのそれぞれがそれだけ単独で言われているのを、われわれが命題もしくは問題だと言っていると解してはならない。そうではなく、それらから、問題や命題が生じるというのである。問題と命題の違いはその表現の仕方にある。つまり「は…

紹介(9) 『燃えつきた地図』 安部公房 

「コーヒーをかけてしまったの。あれは、おとといだったかしら? そうね、弟の告別式があった日……そうよ、あなたが寄っていらっしゃった、あのすぐ後ね……コーヒーの染みは、なかなか落ちないのよ……それで、クリーニングに出しちゃったの……誰かと話していたら…

紹介(8) 『燃えつきた地図』 安部公房 

そこで、(ⅱ)かりに点という意味での部分によって知性認識するのであり、点は無限にあるとすれば、明らかにそれを最後まで行き尽くすということはけっしてないであろう。他方で、(ⅰ)大きさを持つという意味での部分であれば、同じものを数多くあるいは無…

紹介(7) 『王の二つの身体 中世政治神学研究』 エルンスト・H・カントーロヴィチ

我々はこのような空想的とも言える観念形態や形而上学を、ブラクトンのなかにほんのわずかでも見出すことはできない。正義の理念がブラクトンの著作全体にも浸透していることは確かである。しかしブラクトンの<正義>は、黄金時代の処女神とはほど遠いもの…

紹介(6) 『王の二つの身体 中世政治神学研究』 エルンスト・H・カントローヴィチ

レクス・レギアの解釈に二つの可能性があること、すなわち、これを人民主権の基礎として解釈することも、また国王の絶対主義の基礎として解釈することも可能であることはよく知られており、ここでこの論点を考察する必要はないだろう。ユスティニアヌス法典…

紹介(5) 『文明化の過程』 ノルベルト・エリアス 

エラスムス自身は彼の小著『少年礼儀作法論』に、彼の著書の全体の中でそれほど大きい意義を与えていなかったかもしれない。かれは、序文の中で、若い人々の訓育にさまざまな部門があって、「礼儀作法」はそのうちのひとつの部門であり、自分はそれが「哲学…

紹介(4)『ワット』 サミュエル・ベケット 

……そこでマガショーン氏はオメルドン氏のほうに向き直ったのに、オメルドン氏は期待に反してマガショーン氏を見つめておらなんだ(期待ちゅうたわけはじゃ、マガショーン氏は、自分がオメルドン氏を見つめようと向き直ったときにオメルドン氏が自分を見つめ…

紹介(3)『歴史・レトリック・立証』 カルロ・ギンズブルグ 

……アリストテレスが引き合いに出している暗黙の知識は、人がヘラスに所属するものであるということと結びついている。「だれもが」は「すべてのギリシア人」であるのであって、事実、ペルシア人はその知識からは除外されているのである。わたしたちが知って…

紹介(2)『鯰絵ー民俗的想像力の世界』 コルネリウス・アウエハント 

どのようにして地震が起きるかという疑問については、鹿島大明神の不注意とか無力、守護機能の不十分さによってではなく、神が留守の時に鯰が暴れるからとされるようである。日本では、10月には神々が出雲大社にお集まりになると広く信じられている。神々が…

紹介(1)『鯰絵ー民俗的想像力の世界』 コルネウス・アウエハント 

鯰絵は、一八五五年の江戸地震直後に現れたというだけではない。この地震こそが鯰絵の現れる直接の原因であったのだ。すなわち、版画およびそこに描かれた絵画表象は、きわめてユニークな方法で災害に対する反応を表したもので、地震と密接な関係を持ってい…